パソコンのスペックのように両者の差を明確な数字で表せないため表現が難しいところですが、高価・安価なモデルを両方使った経験のある筆者の感覚では、明らかに体感できるレベルの違いがあります。具体的にどのような違いなのか、細かく解説していきましょう。
高価なモデルと安価なモデルで、最も顕著な差が出るのがこの部分だと、筆者は考えています。耐久性については椅子の寿命を決定づけるので、特に注意したいポイントです。
ゲーミングチェアは表面の素材に合成皮革が使われているものが多いですが、安いものではその合皮がすぐにボロボロになってしまう恐れがあります。革クリームを塗るなどメンテナンスをすることで寿命を延ばすことはできなくもありませんが、それなら始めからちゃんとしたクオリティのものを買っておいたほうが後々の心配事が少なくなります。
↑ゲーミングチェアの表面素材に採用されていることが多い合成皮革。これの耐久性が、チェアそのものの寿命を大きく左右します
また、動作の安定性が高まると、リクライニングや昇降時の安心感が違います。特にリクライニング時、安いモデルでは背中に重さをかけると“ガクッ”と一気に倒れ込んでしまうことがあるので、勢いで椅子が後ろに倒れてしまわないかと、一抹の不安がよぎります。一方、高価なモデルでは、しっかりした油圧・ガス圧でゆっくりリクライニングできるので、そういった不安がありません。
ゲーミングチェアの座り心地は製品の設計によって様々ですが、価格差にも左右されます。筆者の感覚では、最も変わるのが座面のクッション性や体圧分散。これらに優れる製品では、長時間座っていても疲れにくくなります。
座面のクッションや体圧分散が不十分だと、体重が一点に集中してかかってしまい、身体を痛めてしまいかねません。体圧が分散しているかどうかは座ってみれば感覚的にある程度わかるので、ゲーミングチェアは実際に座って選ぶべきといえるでしょう。
↑座り心地は、自分の体で確かめるのがベスト。座面の広い大型のチェアなら、深々と腰掛け、体をどっしりと預けられます。
ここまで説明したのは、主に品質についてですが、ここからは機能性に話を移します。当然ながら、高価なモデルでは機能性が高くなる傾向があります。特に違いが出てくるポイントのひとつが、可動域の広さです。
まるでベッドに横になるかのように深くリクライニングできたり、肘置き(アームレスト)の角度や高さ、あるいは位置までも調整できたり。これらの機能を使うかどうかは個人の好みにもよりますが、たとえばゲーミングチェアに座りながら肘置きに肘をついて、前傾姿勢で携帯ゲーム機を操作するといったシーンでは、肘置きの位置調整機能は力を発揮します。
そもそも可動なのか不可動なのか、可動なら可動域はどの程度あるのか。製品スペックを見ると角度などを確認できますが、やはり実際に試して判断するべきといえるでしょう。
↑アームレストの高さや向きをアレンジした様子。アームレストの位置を変えるだけでも、座った感覚は意外に大きく変わります。
オットマンとは、足置きのこと。普段は座面の下側に収納されていて、使いたい時はそれを引き出すようになっています。オットマンがあると、深くリクライニングすると同時に足を伸ばして、椅子に寝そべることができます。これが必要かどうかはユーザーによって分かれるので、必要性があればオットマン有りのモデルを選びましょう。
ハイエンドゲーミングチェアの例:ギガバイト AGC310
ここで、ハイエンドゲーミングチェアの例として、ギガバイト AGC310を紹介します。AGC310の特徴は、大型の座面・背もたれによる快適性と、オールスチール製フレームによる高い安定性です。
↑ギガバイトのハイエンドゲーミングチェア、AGC310
座面は横幅61cm×奥行き51cmで、横幅が特に広めの設計。座面の高さは84.5cmあり、他社製品と比べても大型な部類といえます。座ってみると、体を全体的に包み込むような安定感があり、背もたれに体重をしっかりかけても脚部がガクつきません。座面のクッションには高い反発性があり、体圧をしっかり分散してくれているのを実感できます。また、座面には無数の通気孔が空いていて、合皮製のチェアで気になりがちな蒸れを防いでいます。
↑背もたれが大きいので、平均的な身長の男性の体ならすっぽり包み込んでくれます
↑フルリクライニングしたところ。座面、背もたれの大きさも相まって、まるでベッドに寝ているような感覚を味わえます。
表面素材のレザーは98000回の摩擦試験をクリアしており、脚部・キャスターは225ポンド(約102kg)の耐荷重性を誇ります。また昇降用のガスシリンダーには国際的な認証を受けたクラス4のものを使用しているなど、信頼性が数字で担保されているのもポイントです。
↑座面のレザー。無数の穴が空いており、通気性を確保しています。
価格差によって、ゲーミングチェアの使用感にどのような差が出てくるのかを解説してきました。そのうえで筆者の意見を述べると「安いゲーミングチェアは買うべきではありません」。具体的にいえば、1万5000円以下の製品は敬遠しておいた方が無難だと感じています。
その理由は、寿命の短さと使用感の悪さ。上でも書いたように、ゲーミングに限らず、安いチェアは耐久性が低くなりがちです。合皮が剥がれてきたり、ネジがガクついてきたり。1年程度の使用でもボロが出てきてしまうケースがあるので使っていて不安になってしまいます。メンテナンスによって寿命を延ばすことができるといっても、メンテナンスコストが必要になりますし、どの程度延命できるのかも不透明です。
安く買った製品が早めに壊れてしまうと、買い替えのコストがかかるうえ、新旧のチェアを入れ替えるのも大きな手間になります。基本的に、ゲーミングチェアは自分で組み立てて使用するため、再度新品を組み立てる手間も発生します。それならハイエンドモデルを購入してしまったほうが、初期費用こそ高くなりますが、長期コストは大きく変わらず、かつ買い替えの面倒もなくせるというわけです。
また個人の好みによるといっても、安価なモデルの方が座り心地は悪くなる傾向にあります。また仮に座り心地が良かったとしても、それが長く維持されなければ意味がありません。筆者が以前に使用していた1万円台のゲーミングチェアは、使いはじめて1年程度で座面のクッションがヘタってしまい、結局別のクッションを敷いて使う羽目になりました。耐久性と品質の両面を考えたら、安いゲーミングチェアは買うべきではありません。
そして、ゲーミングチェアを買う際には、可能な限り、実際に座ってから選びましょう。座り心地や機能性の好みには個人差があるうえ、その違いは数字で表せるものではないため、自分で体感するしかないのです。
またハイエンドのゲーミングチェアであっても、製品によって、昇降の高さなどに細かな違いがあります。海外メーカーのチェアでは座面が高めに設計されていることもあり、使用感にはかなりの違いが出ます。いままで意識していなかった部分が気になるケースもありうるため、やはり座って確かめるべきです。大型の家電量販店などに行けば多種多様な機種を試して選べるので、自分の肌で製品ごとの違いを体感しましょう。